このコラムの目次
1 骨盤はどうして歪むのか?
「骨盤が歪む」よく聞くがどの様なことなのかまずは機能解剖学的になぜ歪んでしまうのかを説明していきます。
1−1骨盤の構造
まず、骨盤は「仙骨」「尾骨」そして左右にある「寛骨」の3つの骨からなっています。この「寛骨」は、元々は腸骨・坐骨・恥骨の3つの骨だったものが大人になる過程で(10代後半ごろ)1つの骨になったものです。
男性も女性もこの構造は同じですが、女性は妊娠があるため、男性に比べて中の空洞部分が広く、開きやすい構造になっています。
1−2骨盤の動き
骨盤自体あまり動かないと思っている方も多いと思いますが、実はいくつもの動きをします。よく耳にするのが「前傾」と「後傾」。文字通り前後の傾きのことです。これらは骨盤全体が前や後ろに傾く動きになります。
そして「仙腸関節」の動き。仙骨と寛骨(腸骨部分)をつなぐ関節になります。この関節の動き自体はミリ単位程度ですが、わずかなズレでも腰痛を引き起こしてしまいます。
また、股関節も重要な関節です。股関節は肩関節と同じで「球関節」と呼ばれ、足の骨である大腿骨の端の部分(大腿骨頭)と寛骨臼と呼ばれるソケットの様な部分に嵌るような形でできており、様々な方向に動きます。
1−3骨盤についている筋肉
ここではたくさんある骨盤周りの筋肉の中で、このあと紹介する「骨盤の歪みを矯正するストレッチ」で伸ばしていく筋肉を挙げていきます。
まずは「腸腰筋」「腹直筋」。この2つは骨盤前傾に関わります。そしてインナーマッスルと言われる「深層外旋六筋」。名前の通り体の深層部に位置し、梨状筋・上双子筋・下双子筋・内閉鎖筋・外閉鎖筋・大腿方形筋の六つの細かな筋肉からなっています。
太ももの内側にある「内転筋」。この筋肉も一つの筋肉だと思われがちですが、大内転筋・短内転筋・長内転筋・恥骨筋・薄筋の5つの筋肉の総称になります。
最後は「大臀筋」お尻の一番大きな筋肉で、深層外旋六筋もこの大臀筋に覆われた深層部にあります。骨盤の後傾に大きく関わる筋肉です。
2 骨盤をゆがみチェック
では、ご自身の骨盤が実際に歪んでしまっているのかどうかをチェックしてみましょう。構造や動きのところであったように、大きな動きから小さな動きまで複雑なのでチェックするポイントもたくさんあります。
2−1足の開き具合チェック
- 両足を伸ばして座り、手は後ろについてリラックスする
- この時のつま先の開き具合をチェック
- キレイなVの字になっていればOK(角度は45度)
左右で開きに違いがあったり、開きすぎている場合は骨盤が歪んでいる可能性があります。
2−2骨盤のねじれチェック
- 目を閉じた状態でまっすぐ立つ
- その場で30秒足踏み
その場からあまり動いていなければOK。向いている方向や立つ位置が変わっていたら骨盤のねじれがあるかもしれません。
2−3骨盤の高さチェック
骨盤の高さは実際に触って確かめましょう。骨盤の前面に「腸骨稜」という出っ張った部分があります。そこを触って鏡の前で確認してみましょう。また、足の長さでも確かめることができます。
- 仰向けにリラックスした状態で寝る
- パートナーに両足を軽く引っ張ってもらい、かかとの位置を見る
骨盤の高さが違うと、足の長さにも違いが出ます。1〜2センチほど差がある場合も。
2−4骨盤の前後傾チェック
- 壁に背を向け、肩・お尻がつくように立つ
- 壁と腰の間に手を入れる
この時、手のひらが少し余裕のある状態で入るのが通常の傾きです。拳が入るくらい隙間が空いている場合は前傾、逆に手のひらがギリギリ入るくらいの方は後傾しているといえます。
3 骨盤が歪む原因
チェックが終わったところで、なぜ骨盤の歪みが起きてしまうのかを考えていきましょう。実は日常生活で無意識にやっていることが、大きな原因だったりするものです。骨盤のゆがみチェックで1つでも該当した方は、この中に当てはまるものがあるはずです。
3−1足を組む
日常生活でやってしまいがちなこの姿勢、骨盤の歪みに大きく影響する姿勢になります。それが分かっていても癖になっていると無意識のうちに足を組んでいたりしますよね。
原因としては「足を閉じて座るのが辛い」、つまり内転筋などの筋力低下が考えられます。この筋肉を鍛えることもそうですが、これは日々の意識で直していくしかありません。
3−2横座り
床に座らなければならない状況の時によくやってしまうのが横座り。これは重心が傾くので、片側にだけ負担をかけることになり骨盤の歪みにつながります。
骨盤の歪みを予防することだけを考えれば、床に座る時は正座か長座の姿勢が良いかと思います。他の関節の不調やハムストリングスの柔軟性がない方はこの姿勢も長時間は難しいので、細かく体勢を変えるしかないかもしれません…。
3−3外反母趾
外反母趾は特に女性に多い疾患になります。足底部は「立つ」「歩く」などの動作において一番体重をさせる部分になりますので、外反母趾に限らずですがその部分に痛みや不安があれば立ち方や歩き方に左右のズレが生じ、骨盤も歪んできてしまうというわけです。
3−4体を捻るスポーツ
体をひねる動きはどのスポーツにもありますが、骨盤の歪みが起きやすいのは同一方向にしかひねらないスポーツです。例えばゴルフや野球、バレーボールのスパイク動作なども挙げられます。そう考えると、左右対称に動くスポーツはそうなさそうです。
長年このようなスポーツをされていた方は、筋肉のつき方がその同一方向の動作に強いようにできていますので、骨盤の歪みに繋がっているかもしれません。
最近では、例えば野球で右投げのピッチャーが左投げのフォームも習得するなど、体のバランスを保つためのトレーニングを行なっているところも多いようです。
3−5重心の偏り
足を組む姿勢や横座りも重心が傾いている事になります。他には、立っている時に片足に体重をかけている姿勢。信号待ちや駅のホームで並んでいる人を見ると、大抵の人はこの状態になっていると思います。
この姿勢も癖になっている方が多いと思いますので、普段の意識で変えていくしかありません。
4 骨盤のゆがみを予防する方法
ではどうすれば歪みを予防できるのでしょうか。まず言えるのは、歪みの原因として挙げた普段の姿勢を意識して変えていく事です。座り方や立ち方はどうしても癖になってしまいますので、まずはそこを変えられるよう意識して生活してみましょう。
その上でストレッチやエクササイズを取り入れることで、今ある歪みも矯正していくことが可能です。
4−1ストレッチ
歪みの原因の一つは柔軟性のバランスが崩れている事です。ストレッチはその崩れたバランスを整えることができ、さらに毎日少しでも取り入れることでバランスの崩れ=歪みに早い段階で気づくことができる「セルフチェック」の役目も果たします。
4−2エクササイズ
もう一つの原因は筋力です。単純な筋力の低下もあれば、スポーツのところでもあったようにバランスが悪いことも関係してきます。
さらに良い姿勢を維持するという点で、エクササイズも欠かせません。体幹の筋肉はもちろん、下半身の筋肉もバランスよく鍛えられると良いでしょう。
5 骨盤のゆがみを矯正するストレッチ
ここから実践になります。まずはストレッチを覚えましょう。左右行うものは、それぞれの硬さを比較しながら行うことで、自分でゆがみに気づくきっかけにもなります。呼吸は止めずに1箇所につき10〜20秒を目安に伸ばしてみてください。
5−1腸腰筋ストレッチ
- 足を立てに大きく開き、後ろ足の膝を床につく
- 体を起こしたまま前足に体重をかけていく
後ろ足の太ももを床につけるイメージで前足に体重をかけていきます。後ろ足の膝の下にタオルやクッションを敷いて行ってみてください。
5−2腹直筋ストレッチ
- うつ伏せの状態になり、手のひらを胸の横に置く
- ゆっくりと床を押しながら体を起こし、反らせていく
腰を反る動作になりますので、痛みのある方は無理のないように行いましょう。
5−3深層外旋六筋ストレッチ
- 体育座りの状態になり、大きく足を開く
- 片膝ずつ内側に倒す動きをゆっくり交互に行う
- 片膝を倒した状態で止まり、もう片方の足で負荷をかけながら伸ばす
膝を倒した時にお尻が浮かないようにすることがポイントです。少しでも浮いてしまうと伸びなくなってしまいますので、特に③の時には伸ばしたい方の骨盤を床に押しつけるようなイメージで行うと良いでしょう。
5−4内転筋ストレッチ
- 足の裏を合わせるようにして座る
- 背筋を伸ばし、両手で膝を床の方へ押す
- そのまま体を前に倒す
膝の高さで左右の違いが分かりやすく出るストレッチです。テレビを見ながらなどいつでも行えますので毎日の習慣にできると良いと思います。
5−5大臀筋ストレッチ
- イスに浅めに座り、足首を反対の膝の上に置いて股関節を開く
- 膝を軽く押し、足の脛が床に対して平行になるようにする
- 背筋を伸ばし、体を前に倒す
こちらも背筋がまっすぐになっていないと伸びを感じにくいストレッチになります。姿勢を意識して行いましょう。
6 骨盤のゆがみを直すエクササイズ
そしてエクササイズ。重りなどは使わないので、ご自身の体力・筋力に合わせて、無理のない様に行いましょう。また、エクササイズもストレッチと同じで呼吸が大切です。特に力が入る時には呼吸を止めがちですので、使っている筋肉と呼吸にも意識を向けながら行ってください。
6−1ペルビックティルト
- 仰向けの状態になり、両膝を立てる
- 大きく息を吸ってお腹を膨らませる
- 息をゆっくり吐き出してながらお腹を凹ませていく
- 最終的に腰を床に押し付け、仙骨が床から離れるようにする
体幹を鍛える「ドローイン」エクササイズの応用で、骨盤の動きがプラスされています。動きは小さいですが、インナーを鍛えることができるので骨盤の歪みを整えるのにも効果的なエクササイズです。特にこのエクササイズは、呼吸と動きを連動させて行うのがポイントになります。
6−2ヒップリフト
- 仰向けに寝て手のひらが床につくように体の横に置き、両膝を立てる
- 足の裏で床を押すようにしてお尻を持ち上げてキープする
この時肩から膝までが一直線になるようにお尻を持ち上げます。最初は30秒を目標にし、徐々に長くできるように挑戦してみましょう。
6−3アブダクション
- 横向きに寝て、下の足や腕は楽な位置に置く
- 上になっている足を伸ばしたまま、持ち上げる
- ゆっくり元の位置に戻す
骨盤の歪みなので、お尻のトレーニングが多めですね!これはお尻の横側、中臀筋を鍛えるエクササイズです。体な前後にブレないよう手や足の位置を工夫し、お尻を意識して動かしましょう。
7骨盤の歪みを直すメリット
歪みを直すことで女性にも男性にも嬉しいメリットがたくさんあります。こんなに良いことがあるなら、歪んでいるままじゃもったいないですよね!
7−1プロポーションが綺麗になる
第一に見た目が変わります。一番分かりやすいのがぽっこりお腹です。骨盤後傾によってお腹の脂肪がたるんで見えるだけでなく、内臓の位置も下がってしまうので下腹部がぽっこりと出てしまいます。
また、姿勢が崩れる事で背中にお肉がつきやすくなったり、お尻の位置やバストの位置も下がってしまいます。逆に言えば、ぽっこりお腹やお尻・バストの位置は姿勢を直すだけで変わります。実際の体重が変わってなくても、骨盤の歪みを矯正し、姿勢が良くなるだけで痩せ見えすることができるのです!
7−2代謝アップ
基礎代謝は筋肉の量で決まってきますが、その筋肉をしっかり使えてるかどうかでも大きく変わります。先程背中に脂肪がつきやすくなるといったのは、骨盤が歪み姿勢が悪くなることで背中の筋肉を使わなくなってしまうからです。特に背中には体の中でも大きな筋肉がありますので、普段からその筋肉を使えるようにするだけで代謝アップするというわけです。
7−3肩こり予防
姿勢の悪さは肩こりの大きな原因になります。骨盤は体の土台となる大事な部分です。例えば、家の土台が崩れたら屋根まで傾いてしまうように、体の土台となる骨盤が歪むことで上半身全てが歪み、肩こりと引き起こします。
実はあなたの肩こりの根本的な原因は、肩や背中ではなく骨盤に原因があるのかもしれません。
7−4腰痛予防
骨盤が歪む=家の土台が崩れるということになりますので、もちろん骨盤のすぐ上に位置する腰への負担も大きくなります。肩こりと同じように、腰の筋肉のケアをしてもなかなか良くならないという方は、骨盤の歪みが根本的な原因になっている可能性がありますので、腰ではなく骨盤周辺の筋肉にアプローチをかけることで改善が期待できるでしょう。
8終わりに
歪みを直すことでこれだけのメリットがある…ということは、骨盤が歪んでいる状態はデメリットだらけだと言えます。繰り返しになりますが、骨盤は体の土台となるだいじな箇所ですので、まずここを変えることが全身を整えることにつながります。
最初は自身の日常の癖を見直し、改善するところから始め、ストレッチやエクササイズは出来る範囲で取り入れてみてください。初めから全部やると大変ですので、続ける自信のない方はストレッチを優先して行い、徐々にエクササイズも加えられると良いでしょう。
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