このコラムの目次
1 肩甲骨の仕組み
肩甲骨はじつは、胴体から浮いている骨です。
腕(上腕骨)と鎖骨だけで繋がっており、その周りの僧帽筋や菱形筋、大胸筋や小胸筋、ローテーターカフ、前鋸筋などたくさんの筋肉で支えられています。
肩甲骨が本来の動きとして、しっかり動いてくれると腕を大きく動かすことができます。腕の重さは意外と重く、大人の平均で5kgほどあり、不安定な肩関節には常に負荷が掛かっています。その上カバンなど、物を持つとなると肩への負担は大きくなるので、いかにして普段から肩への負担を減らす過ごし方をするかもポイントです。
2 肩甲骨を動かすメリット
肩こりや猫背などの不良姿勢になってしまうのを防ぐことができます。また、背中の筋肉は大きい筋肉なので、しっかり動くことで代謝を上げたり、背中や鎖骨周りなど上半身を美しく見せることができます。
2−1メリット①肩こり、首こり改善
肩こりの主な原因として、首の筋肉や背中の筋肉、胸の筋肉があげられます。首や胸の筋肉、背中の筋肉は腕や肩周りを動かす時に使われますが、硬くなってしまうと余計なところに力が入ってしまいます。
肩甲骨が動くことで、上半身がリラックスでき余計なところ(首や肩、背中)に力が入りにくくなることで、肩が上がるのを防ぐことができたり、良い姿勢で長時間過ごせるので、肩こりが改善されたり肩こりになりにくくなります。
2−2メリット②姿勢改善
猫背姿勢になってしまう原因の1つとして、肩甲骨の周辺の筋肉があげられます。特に近年デジタル化が進み、電車はもちろん移動時にスマートフォンの画面を覗き込んでいる方は少なくありません。パソコンももちろんそうですが、手元の物を見ようとすると肩が内側に入ったり、背中が丸まりやすくなってしまいます。
特に肩甲骨は、普段意識をしにくい部分なので、非常に固まりやすくなってしまいます。肩甲骨を意識的に動かすことによって、背中が丸まりにくく背筋がピンとしやすくなるのです。
2−3メリット③代謝アップに繋がる
肩甲骨についている大きな筋肉が、しっかり動くことによって血行が良くなることはもちろん、筋肉の活動量が増えるので代謝が上がりやすくなります。
また、肩甲骨の裏側には褐色脂肪細胞と言う脂肪を燃やしてくれる細胞が隠れており、肩甲骨がしっかりと動くことによって褐色脂肪細胞が活発に働き、代謝が上がりやすくなっています。
2−4メリット④背中のぜい肉が落ちる
まず、なぜ背中にお肉がつくのかと言うと、猫背であったり背中の筋肉が動きにくくなってしまうと、肩や腕が前に引っ張られるのを防ごうとして背中の筋肉が硬くなってしまうことにあります。
また、背中には上でも述べたように脂肪を燃やす細胞があります。肩甲骨が動くようになるだけで、その細胞が刺激され脂肪が燃えていきます。
2−5メリット⑤リンパの流れをよくする
肩甲骨が動くようになってくると、姿勢が徐々に改善されしっかり肩甲骨が背骨側に寄るようになり、肩も内側に入りにくくなっていきます。肩が内側に入ってしまうと、胸の筋肉はどんどん萎縮していき、リンパを圧迫してしまいます。そのため、姿勢が改善されるだけでも鎖骨周りのリンパの流れが改善されます。
3 肩甲骨を動かすためにアプローチしたい筋肉
肩甲骨を始め腕や肩を動かすには、以下の筋肉が大きく関わってきます。肩甲骨はたくさんの筋肉に支えられていることが、わかって頂けると思います。
3−1僧帽筋(そうぼうきん)
僧帽筋は、腕を上げたり肩甲骨が上に引き上げられる時に、使われる筋肉です。また、姿勢を保持しようとして僧帽筋は全体の10%程使われており、主に頭部を中心に上半身を支えています。
僧帽筋は上部、中部、下部に分けられており、動作によって動く筋肉は様々です。特に真ん中の筋肉は、肩甲骨を支える役割が大きいです。その他にも重いものを持った時に肩甲骨が過度に下がらないようにし、状況に応じて緊張と脱力を繰り返しています。
3−2菱形筋(りょうけいきん)
この菱形筋は大菱形筋と小菱形筋の2つから成り立っています。その名の通り肩甲骨の間にひし形になっていて僧帽筋に覆われている外側からは触れにくい筋肉です。この2つの筋肉は自分に向かって物を引き寄せる筋肉で懸垂や引き出しを引くときに働きます。
3−3小胸筋(しょうきょうきん)
肩甲骨を下げたり、肩甲骨を固定したりする際に働く筋肉です。大胸筋に覆われた筋肉の束が合わさり、三角形の形をした筋肉です。大胸筋とともに、腋窩(上腕と胸の筋肉の間のくぼみ。脇の下)の部分の前側を守っています。また、深呼吸をする際に前鋸筋と同様に、吸気を行います。この動きがあることによって、息を吸い込む時に胸郭を上にあげるのを助けてくれます。
3−4ローテーターカフ
回旋筋腱板(かいせんけんばん)とも言われています。
これは、肩の前側と後ろ側に位置し1つの筋肉だけではなく、棘上筋、棘下筋、小円筋、肩甲下筋の4つの筋肉から成り立っている肩のインナーマッスルになります。肩関節は自由に動くことができるので、腕と肩の付け根部分に負担をかけてしまうため、筋肉で覆って安定性を生み出しています。
また、この筋肉があることによって、上腕骨を回旋させることが可能です。インナーマッスルは、動作の安定性はもちろん、長時間同じような姿勢でいる時に、状態を保持する役割を担っています。
3−5前鋸筋(ぜんきょきん)
のこぎり歯のような形をしており、瞬時に肩甲骨を前に押し出すときに強い力を発揮します。また深呼吸をする際に、肋骨を持ち上げる「吸気筋」として働きます。また、日常生活では、届きそうで届かないくらいのところにある物を取ろうとしたり、奥にある物を手前に押し出す時に使われる筋肉です。
4 誰でも肩甲骨を動かせるようになるストレッチ
肩甲骨を始め、上半身の筋肉は一見動かしているように感じますが、実はあまり動かせていないことが多い部分です。しっかりストレッチをして、筋肉の緊張を取り除きましょう!
4−1僧帽筋のストレッチ
- 右手を腰の位置に持っていきます。
- 左手は右側頭部に添えていきましょう。
- 右肩と頭の先を引き離すように、首を左に傾けていきます。
- そのまま20秒〜30秒キープしましょう。
- 反対側も同じように行います。
4−2菱形筋のストレッチ
- 四つん這いの姿勢になります。
- 左手は手のひらを床につけ、左手に向かって右手を内側に入れていきます。
- しっかりと筋肉が伸びたら、そのまま姿勢で30秒キープしましょう。
- 反対側も同じ様に行います。
4−3小胸筋のストレッチ
- 壁の前で横向きになり立ちます。
- 右腕を伸ばした状態で、手のひらから肘くらいまでを壁につけます。
- そのまま壁に体重をかけて、腕の付け根に近い部分(胸の筋肉)が伸びていることを確認します。
- その状態から少しずつ後ろに、腕をずらしていきます。
- 呼吸は止めずに、筋肉が伸びているところで30秒程キープしていきましょう。
- 反対側も同じように行います。
4−4ローテーターカフのストレッチ
- 腰に手を当てて立ちます。
- 腰に手を当てて曲がっている肘をもう一方の手で前に引き寄せていきます。
- 痛気持ちいいくらいまで伸びたら30秒キープしていきましょう。
- 反対側も同じように行います。
ローテーターカフのストレッチ②
- 肩を下げた状態で、右腕を背中に待っていきます。
- もう一方の手で、背中側に持っていった腕の肘を持ちます
- 肩甲骨を背骨側に寄せるように、肘を内側に引っ張っていきます。
- そのまま重心を右に寄せるようにし、首を左側に軽く倒して30秒キープしていきます。
- 反対側も同じように行いましょう。
4−5前鋸筋のストレッチ
- 肩幅くらいに足を開いて立ちます。
- そのまま両手を頭上で組み、腕を伸ばした状態にします。
- その姿勢から身体を左に倒していきましょう。
- この時に、斜め後ろに向かって上体を倒していくと、よりしっかりストレッチされます
- しっかり伸びたところで、30秒キープしましょう。
- 反対側も同じように行います。
5 誰でも肩甲骨を動かせるようになるエクササイズ
肩甲骨を支えている筋肉は、緩めるだけではなく適度な緊張感も必要になります。また、筋肉が弱ってしまうと日常的に動かす部分なので、痛みの原因にもなってしまうので、エクササイズが必要です。
5−1ショルダーシュラッグ
対象筋: 僧帽筋&菱形筋
- 肩上部がストレッチ感があるくらいの重りを両手に持ちます。(500ml〜600mlのペットボトルに水を入れたものでもOK)
- 肩をすくめるように両肩を耳に近づけていきます。
- 肩の天辺が耳にしっかり近づいたら、5秒キープしていきましょう。
- キープ後はゆっくりと両肩を元の位置に戻していきます。
- この時にストンと肩を落とさないように注意しましょう。
- これを10回行います。
5−2ダンベルフライ
対象筋:大胸筋&小胸筋
女性であればバストアップ効果も期待できるトレーニングです。
- スポーツクラブであれば、ベンチで行います。ご自宅であれば、床の上で行いましょう。
- 両手にダンベルを持ち、両腕を肩の真上に来るようにセットします。
- 肘を軽く曲げながら、ゆっくりと両腕を大きく開きながら、横に下ろしていきます。
- 胸の筋肉に刺激をしっかり感じたら、3秒キープしてスタート位置に戻していきます。
- ダンベルを下ろす時に息を吐いて、ダンベルを上に持ち上げる時は息を吸いましょう。
- これを10回行います。
5−3エクスターナルローテーション
対象筋:ローテーターカフ
野球などの投げるスポーツを行なっている方には、特におすすめのトレーニングです。
- マットなど安定したところで、横向きに寝ます。
- 右手でダンベル(2kg〜5kg)を持ち、肘は90度にし身体の横につけたまま前に持っていきます。
- ダンベルを身体と垂直になるくらいまで、肘を起点にして上に持ち上げていきましょう。
- 垂直くらいまで行ったら、ゆっくり元の位置に戻していきましょう。
- これを10回繰り返していきます。
- 反対も同じように行いましょう。
- 慣れてきたら、セット数を増やしていきます。
- また、ダンベルを上げる時よりも、下ろす時にゆっくり行うと効果的です。
5−4プッシュアップ
対象筋:大胸筋&前鋸筋
腕立て伏せに似た姿勢で行うことがきます。
- 腕立て伏せができる姿勢になります。
- 腕を伸ばしたまま、両手は肩幅より少し広く取ります。
- 肩関節は前に動かして、肩以外の上半身は下方向に少し動かしていきましょう。
- 今度は肩甲骨を後ろに動かして、上体は上方向に少し動かします。
- この動作を5回〜10回繰り返していきましょう。
6 終わりに
比較的手軽にできるものを中心にご紹介させて頂きました。肩甲骨周辺の筋肉は、様々な動きに対応している分、動いている感覚になりやすいです。
しかし、日常生活の動きだけでは、筋力も柔軟性も補えていません。日頃からしっかり動かして、負担がかかっているところはしっかり緩めて、たくさん肩甲骨が動くようにしていきましょう。肩こり解消はもちろん、特に女性にとって嬉しいことばかりの、肩甲骨を見直してみませんか?
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